神戸いずみの会 公式ブログ

「神戸いずみの会」は、1982年から続く患者会です。

2017年12月例会

今年最後の例会は、5日に行いました。いずみの会の事務局メンバーで、臨床心理士の城谷ひとみさんが、「癌と創造性」というタイトルで発表して下さいました。いずみの会発足時から長年いずみの会の事務局をして下さった高出昌洋さん(2009年12月ご逝去)について、臨床心理士の視点から研究されたものです。元々は専門論文ですが、今回は高出昌洋さんの追悼という意味も込めて、高出さんの作品も味わいながら、特別に語って下さいました。
 また初めて来られた、Aさん(女性)もお迎えしました。Aさんは、今年亡くされたお父様のことで、何度かいずみの会へご相談など下さっていました。まずはAさんを囲んでのお互いの自己紹介からスタートしました。


病と創造性  ― 故 高出昌洋先生を偲んで――
高出昌洋先生との出会い
 大学院で学んでいる時に、お電話でお願いしたら、すぐに「いいよ」と言っていただき、この会に来るようになりました。すごくダンディな人だなぁと思いました。高等学校の社会科教師をされていた高出昌洋先生は、39歳で胃がんの手術をされ、その後の療養中に初めて木版画に出会われました。

病と創造性とは
 エレンベルガ―という人の言葉、「クレイティブイルネス」があります。これは「病を乗り越える過程で、芸術や発明、発見が起こることがある。危機的状況を乗り越えるときに、創造的なことが行われる」という意味ですが、まさに病気をきっかけに、新しく芸術家としての豊かな人生を歩まれました。かよ子さんのお言葉「病気になっていなかったら、多くの人にも出会っていないし、病気は決してマイナスばかりではないですね」にもあるように、死を意識し、デットエンドの方から見つめつつ生きることにより、充実した生を歩まれたのではないでしょうか。

多様な作品から
 朝日新聞で一年間連載された河野博臣先生のエッセイ「追憶のカルテ」の挿絵より選びました。先生が好んで描かれた「葉がない木」については、やはり私と同じく高出先生から多くを学んだ夫(内科医)が、医学的視点から「腫瘍ができた胆管の病巣に重なる部分があり、無意識の部分と芸術作品の反映かもしれない」と言っています。


作品「デイリリィ」
 かよ子様が最後の個展に出展された作品「デイリリィ」を持ってきて下さいました。ご病気により体調が厳しい時に、こんなにも生命力にあふれる作品を作られたことに驚きます。ご本人のコメントは、「これまで花全体に目を向けてきたが、今回は顕微鏡で拡大したイメージで制作した。無駄を省くことで、花の命をよりくっきりと表現した」とあります。ご入院中に私が訪問した時、「そんなに大事なものは、たくさんないよね」と語られたのですが、無駄なものも多い日々の中で、すべてそぎ落とし、強く生命力を映し出した作品ではないかと思います。かよ子様によると、作品に深い濃淡をつけるために、8種類の板を使って13回も刷り重ねてあり、特別根気と体力が必要だったそうです。この作品を通して、身体は衰えても、花の内側から描き出すことにより溢れでるような生命、命がクローズアップされていると感じました。

問いの意味
 病室からの帰り際に、「あなたのコメントは?」と問われたのに、返すことができませんでした。今考えると、「内側から描いた魂が、あなたにどう見えているのか?」と尋ねておられたのかもしれません。終わりを意識しつつ、今を生きるということを主体的に選び、生き切られた高出先生。「そんなに大事なことはたくさんないよね」という言葉は、今を生きる私たちにも大きな意味があると思います。残して下さった作品をこうやって反芻して味わうことにより、先生はずーっと生きておられると思います。

発表を聞き終えて.... 高出昌洋さんを知る人も知らない人も、高出昌洋さんの生き方と自分を重ねたり、作品を味わい過去を思い出して語り合ったりしながら、共に印象深い時間を過ごすことができました。城谷ひとみさん、ありがとうございました。


近況報告・・・少しお話をしました。
・(Bさん 女性)しばらくお休みしている間、いろいろありすぎて。でも一つずつこなしていかなくてはと思っています。精神的にショックを受けたのは、主治医の先生に「調子が悪いんです」と伝えたら、「Bさん うつじゃない?」と言われたことです。「え、私が?」と言い返すのが精いっぱいで、「ちがいます」と言い切れなくて。先生にとってはいつもデータだけ。「しんどい」という言葉をとらえてくれません。なんとなくもやもやしていますが、今を大事に、自分らしく生きていられたらいいかなと。そういう毎日です。
・(Cさん 女性)それはショックだろうと思います。私は精神科にかかっていますが、自分から「私はウツかなと思う」と言ったのでダメージはなかったのですが。先生からそんな風におっしゃるなんて、ショックですよね。